追記章 「漱石論」との遭遇を受けて(その2)
前回に述べたように、国文学界という畑違いの世界に首を突っ込み、当然に、おおいに戸惑わされる一方、新たな知見も得ています。加えて、同じ外国体験ではあるとしても、それらは一世紀以上も時代が隔たっており、しかも、両体験者の立場上の違い――片や漱石は明治のエリートであり、片や私は昭和の一般人――もあるわけですから、そこに顕著な相違が生じないのが不思議でもあります。本稿は、そうした外国体験について、おそらく極めて型破りにちがいない、すでに定着した見解とは距離をもった特異な見解を表すものです。 続きを読む