3.03 本源的な二重性

MaHa 君もその談義に入っていたはずだけど、兄弟サイト『両生歩き』の居酒屋談義36話「人生3周目は傘寿から」で、実に重要な話が交わされてるね。

相棒 あれは面白かったのですが、その重要な話って、そのうちのどの話ですか。

MaHa 人はその人生の大詰めにきて、「健活」と「終活」の背中合わせの綱渡りに際し、どう「死角」に迷い込まないことができるかというくだり。そのいわば「迷宮の虜」になるのを避ける第三のやり方についてで、そこで言われていた、人間の存在って、もともと二重構造だって話。

相棒 そうなんです。二重構造って聞けば、資本主義の矛盾として捉えちゃうのが普通ですが、そうじゃなく、人間の本源的な有限性と無限性という二重性です。

MaHa 人間を有限性に立って、そこでそのこの憂き世の二重構造と考えれば、それこそ私たちの死は、それですべてが終わるどん詰まりの話となる。そして、「健活」と「終活」が重なり合って、アクセルもブレーキも使い分けが効かなくなり、自分でもどうすることのできない成り行きの中で、その無惨な終わりを迎えなければならないこととなる。
 それを、そう考えるのではなく、自分をなす意識というものは、そもそも、そうした有限性を超えたところに宿るものであって、そういう無限である意識であるからこそ、有限である身体を持つ人間とは、本源的に二重構造にあるという議論。実にすごい議論じゃないか。
 それにしても、人間、こんな「無惨な終わり」といったことに、いつから、こうも執拗にこだわることになってしまったのだろうか。そもそも、自分の子や孫のことを考えるだけでも、それは永遠に続くことのはずなのに。

相棒 そうなんですよ。命を自分のことだけにしてしまうから、後々の子孫のことだって、命あってのことだってことを忘れてしまっている。

MaHa そう、生命って、そういう連続したもののことで、一個一個として考えるものじゃない。自分だって、祖先からの連続性あって、生まれてきているのに。

相棒 だから自分の「死後の世界」が、今の自分とは縁が切られた、やたら持って回った不吉な話として扱われてきた。そこでは意識の無限性をも、肉体の死滅をもって全ての終わりとし、その行方を無くてしまったために、そんなおどろおどろとした話としてしまうこととなった。でも、この二重性とはそういうことではなく、誰しもの自分の意識は、たとえ身体は滅んだ後も、いくらでも無限に広がって残ってゆくのであって、もともと肉体と意識の間には、二重性ははっきりとしていた。

MaHa そこでだが、その意識を構成するものを、君たちの談義ではそれを「情報」と呼んでいたね。

相棒 はい、そうなんですが、実は僕としては、この「情報」という言葉は、大いに舌足らずと考えてます。
 もともとこの「情報」って用語は、IT世界の用語として使われ始めたために、そうした何か数理的なものとの受け止めが強いのですが、じつはここで言われている「情報」とは、そういうものではないんです。そこには数理的なデータやアルゴリズムも含まれますが、もっと広く人間に関係する、形としてはつかめない、意識、思い、感情、愛、想像、直観それらすべてを包括する言葉なんです。

MaHa 「情報」の「情」の部分はいいんだが、「報」の部分はまるで官製言葉で上意下達だ。「情知」や「情智」なんてでもいいんだが、その発音が「情痴」を連想させて、まるで台無しにしてしまう。

相棒 そうですね、とりあえず、言葉としての「情知」くらいは定着させたいですが、ともかく、そうした要注意すべきな「情報」との語です。

MaHa ちょっと話は跳ぶんだけど、人類、過去の過ちを繰り返さないために、いまほど世界平和の実現が必要な時はないよね。
 そうした時に、いわゆる現実論者は、核抑止論だの、対抗武装だのとの議論に油を注いでいるが、まともな人たちは、その危なさやぼう大な浪費を本当に危惧している。
 つまり、いまここで必要なのは、そうした目先の現実論の上をゆく、本当に誰にとってもの利益となる、彼らに言わせれば「理想論」を、いまこそ現実化することだよ。
 言い換えれば、私たちの意識が無限だからこそ望める、それこそ子孫代々へと引き継がれる、平和というものを形にさせてゆくことだよ。それは、世界の誰しもの願いだし、ここで誰しもがそう考え、そうだからこそ、それが現実にしえるということなんだよ。その意味では、金は少しもかからん。

相棒 つまり、人間が本源的に持つ二重性を生かすからこそできる、世界平和の現実化。片一方のリアリティーに縛られていては、互いにすくみ合うばかりで、やがて人類、自滅して行ってしまう。

MaHa つまり、君のいう「〈心〉理学」の〈心〉ってのは、ここでいう「情報」、つまり「情知」のことなんだね。

相棒 そしてその〈心〉の無限性、永遠性ということです。

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