人生はメタ旅へ向かう(6)

追加章 「旅」は脳への栄養源

『運動脳』という本

前回の第5章で最終章にしたはずだったのですが、その後、一冊の本を発見し、その追加章をここに付け加える必要が出てきました。

そしてその本とは『運動脳』(右図)で、健康の本源は身体に加え脳を健康に保つことにあり、それには運動が必須であるというものです。これまで、身体の健康ために運動が必要とは言われてきましたが、脳の健康ためにも運動が必要というもので、それをこの本は、科学的エビデンスを縦横にそろえて立証しているものです。

この見解は、私がこれまでに体験的に実感し実践してきたことそのもので、脳の健康のためにはそれを支えるインフラとしての身体の健康が不可欠で、そのためのもっとも効果的で無害な方法が運動であるという、まさにその論証です。

この本が述べていることを言い換えれば、若さを保つための万能薬が運動である、ということです。言われてみれば、なんとも明快すぎる見解なのですが、それが医学的処方として述べられているところが重要です。単なる体験談ではありません。おそらく今後、誰もの健康上の常識として、世界へと広がってゆく見識になるものと思います。

  • 『運動脳』:スウェーデンの精神科医師、アンデシュ・ハンセン著。他の主著書に『スマホ脳』などがある。原書出版は2016年、オンライン版出版は2022年5月。

 脳にとって最高のエクササイズは何か? 15年前にそう聞かれたら、たぶん私はクロスワードパズルなどを思い浮かべただろう。ところが多くの人が驚いたその答えは、身体を動かすことだという。
 身体を動かすと、気分が晴れやかになるだけでなく、あらゆる認知機能が向上する。記憶力が改善し、注意力が研ぎ済まされ、創造性が高まる。それどころか知力にまで影響がおよぶという。
 これぞまさに正解、脳にとっての最高のエクササイズに違いない。〔同書 p.4〕

 脳にとって最高のコンディションを保つためには、ランニングを週に3回、45分以上おこなうことが望ましい。重要なポイントは心拍数を増やすことだ。
 そして、有酸素運動を中心に行おう。筋力トレーニングも脳によい影響をおよぼすが、どちらかといえば有酸素運動のほうが望ましい。あなたが筋力トレーニングのほうを望むとしても、持久力系の運動をぜひ取り入れてほしい。
 (略)
 根気よくあきらめず、とにかくつづけよう。脳が再構築されて、構造が変化するには時間がかかる。
 たまにでも走ったり歩いたりすると、すぐに脳の血流が増えるのは確かだが、新しい細胞や血管が形成されたり、領域同士の結合が強化されたりするまでには、ある程度の期間が必要だ。数か月、あるいはもっとかかるかもしれない。ただし、週に数回の運動を半年ほど続ければ、めざましい変化を実感することだろう。〔同書 pp.306-7〕

こうして、この強力な援軍の出現を得て、私のこれまでの運動熱心なライフスタイルは、単に個人的な事例に終わらず、誰にでも共通する普遍的な原則とも数えられることともなりました。

それはそれでまことに嬉しいことで、そしてもしそうであるなら、さらに言えることがあります。それはそのような意味で、「旅」とは何であるのかを説明しています。それが以下に述べる「もう一つの〈収れん〉」です。その説明のために、兄弟サイトの最近記事との行き来が必要となり、ちょっと煩雑な展開となることをお許し願います。

もう一つの〈収れん〉

それは、「旅」とは、この運動脳を作る要素の「運動=移動」であるということです。そしてその運動=移動が巡りめぐって、私たちの脳の健康を直接に支え、若返らせてもくれるベストの方法として、自分に回帰してくるということです。

さてそこでなのですが、この『運動脳』に述べられている科学的立証は、従来の還元主義に厳密にのっとっており、「メタ旅」のようなメタフィジカルな移動や運動には触れていません。つまり、この科学的立証には、物理的運動がもたらす人間体内の化学物質の働きを追う立証に限られています。

しかし、この「人生はメタ旅に向かう」では、旅がリアル旅からメタ旅へと変化する、一種のスペクトラムをなしていることを見てきました。つまり、運動には、物理的運動に限らず、非物理的運動もあり、相互につながり合っているのです。

つまり、『運動脳』の論証には、主に脳内物質の働きによる、運動と脳機能のつながりが根拠にされているのですが、生命情報――第2章で述べた「〈情報〉」――については、まだその成果が乏しいためか(それとも想定外なのか)、ごく限られた論証しかされていません。

つまり、人間にまつわる科学的証明の方法は、まだ、物質中心主義で動いており、今後、非物質すなわち生命情報の分野への進展が期待されるところです。

このようにして、第二の〈収れん〉が提起されます。すなわち、前回の最終章の「人生はメタ旅へ向かう(5)」と兄弟サイトの「日本エソテリック論 その5」の両結論の第一の〈収れん〉がありました。そこにさらに、その運動の産物によるさらに健康な脳が、「越境」という移動や「永遠の旅」という非物質世界も視野に入れていたように、物質還元主義科学論証ではつかみ切れていない、第二の〈収れん〉も見え始めているということです。それは言い換えれば、従来の科学分野を越える「新科学」の世界への展望が得られ始めているということです。

そしてこの「新科学」とは、「メタ旅」すなわち「メタ移動=メタ運動」をもって作り出されるさらに「健康」な脳が作り出す世界ということです。むろんその成果が、「科学」として承認されてゆくには、まだまだ長い年月を要することでしょう。

繰り返しますが、人生という待ったなしの旅路において、従来の科学的手法に限ってはいられない、新たなプロセスの採用は避けられません。そこにおいて、それこそ人生という実験である日々の体験から、まさに最先端の観測結果を見つけ出し、活用してゆくこととなりましょう。

私にとっての健康観の進展

私にとって、健康との取り組みは、人生のうちの最大の課題としてきているといっても過言ではありません。それはもう、「体が資本」どころか、お金以上です。例えば、私がちょうど60歳の時に表した「健康という年金」などといった考えにそれは現れています。

そればかりでなく、自分の健康を、身体という「内的環境」の問題ばかりでなく、それを取り囲む「外的環境」も取り入れた、エコロジーとしての健康というのも、「私の健康観」の柱です。

そしてさらに、こうした健康観を自分の日常生活に取り入れ、健康といえばとかく身体問題を第一に捉えがちなのですが、むろんそれも正しいのですが、その身体的健康を追求していて体験的に発見したのが、精神も含む総体の健康のインフラとしての健康という考えです。

こうして、私の健康観は、さらに進展して、そのバージョン3ともいうべき、量子理論の発展ともからんだ異次元の健康といった考えに進んできています。

なお、このような日常における実際の取り組みの様子は、兄弟サイトの「私共和国」の欄に、日々の日記風に記録されています。

最後に、『運動脳』の著者アンデシュ・ハンセンは1974年生まれ49歳で、私とは28歳違いです。この一世代違った私が、この本に書かれた方法をすでに彼のこの年齢以前から実行して今に至っています。つまり私は、ここに述べられた方法を行った実際の実験結果ということです。そうしたモデル例の本人として、私はこの本の記述内容は確かであると支持し、その実行を推薦いたします。

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