「新領域」への到達
前回までに、「リアル旅」なり「メタ旅」なり、「旅」という移動世界を踏破し終えたことで、ひとつの節目を迎えると同時に、ある種の「新領域」に到達したかの感触があります。
それは、これまで、「汎情報」とか「《情報》」とか表現して、今日のデジタル情報に代わる〈もっと根源的な情報の世界〉、平たく言えば、「思いの交換媒体」の存在を述べてきました。つまりこの大自然には、今日、私たちが認める以上に微妙で深い、そうした情報のやり取りがある、という感触であり、そういう仮説の設定です。
それを私は《生命情報》と呼ぼうと思います。ただこう表すと、なんとも大業な用語です。しかももちろんその通りで、すでに生物学では、情報生物学と呼ばれる遺伝子に関する斬新な領域が開発されつつあります。つまり、そうした先進専門家たちの取り組む先端領域に食い込むといった意図からではなく、ある意味でもっと素朴でナイーブな、一個人が、そして「生活者」が実感し取り組みえる範囲の、そしてそれだからこそ人々間で共有しうる、生命に関わる情報――つまり物質を媒介としたものとは言えない――の分野を扱ってゆこうとするものです。
もちろん、いわゆる科学の立場からは、依然、対象外あるいは疑似科学として排除して扱われるものであることは承知していますが、少なくとも、その科学の辺縁には位置するものではあると考えます。
二つのアプローチ
そうした辺縁に位置するこの《生命情報》は、概念的には、二つの分野からアプローチされます。
一つは、福岡伸一の「動的平衡」論でいう、命にかかわる「効果」の分野であり、もう一つは、量子理論でいう、素粒子レベルでの「粒」とも「波」とも、今日の人間の知識では捉えきれない、あるいは、暗黒物質/エネルギーなどとも別角度から指摘されている、そうした「ナニモノ/ナニコト」です。
そしてだからこそ、それは「哲学」と呼ばれる思考=メタフィジカルな世界と親和性を持ってくるもので、古くから人間がなじんできたフィロソフィーの試みと現代科学の最先端分野との間に橋が架けられる、温故知新な角度から分け入ってゆく概念であることです。
そういう意味では、本サイト「フィラース Philearth=philosophy+earth」のアイデアとどこか通じるものがあり、私個人としては、なつかしくも新鮮でもある、「ナニモノ/ナニコト」のエリアです。
かくして、この「生きていること」でありながら、同時に、「ナニモノ/ナニコト」であるという世界は、ともかく今日の私たちがもつボキャブラリーでは捉え切れないもので、そういう意味でも新天地への踏み込みです。
加えて、今、こう書いている私がそうであるように、いかにもワクワクさせられる、実に未来的な世界であることに間違いありません。
今回は、以上のようなイントロダクションのみとなりますが、今後、この《生命情報》をキーワードとして、この新天地での議論を展開してゆく計画です。